●目の仕組みと黄斑のはたらき

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図1
加齢黄斑変性症について説明するまえに、目の仕組みと働きのあらましを述べておきましょう。人がものを見るときには、光は図1のように角膜、レンズ(水晶体)、硝子体を通って目の感光膜に像を結びます。この網膜は紙のように薄い膜ですが、フィルムと違っていくつかの特異な性質があります。その一つは周囲の明るさに応じて感度が変わることです。暗いところに入るとだんだんに目が暗さになれて周りのものが見えてきますね。これは暗順応という網膜のはたらきです。もう一つは、網膜の解像力は一応でなく、中心部が非常に鋭敏で、中心を離れると解像力、すなわち視力は極端に落ちてきます。この中心部を黄斑(おうはん)といい、さらに黄斑の中心を中心窩(ちゅうしんか)といいます。(図2)
図2

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視力が1.2とか0.5といったことを聞かされると思いますが、これは中心窩(ちゅうしんか)の解像力です。また色の感覚も黄斑の働きです。この網膜への光の刺激が視神経(ししんけい)によって脳に送られて、映像情報として認識されるのです。加齢黄斑変性症はこの黄斑に起こる、主として老化が原因でおこる異常です。社会の高齢化に伴って増加しています。健やかに老い、良い視力をたもっていくには、この病気について正しい知識をもって、もし加齢黄斑変性症になっても早く、診断を受けることが大切です。
この病気が今どのくらい多いか、一つの例を挙げてみましょう。私の患者さんでご高齢の内科の先生がいますが、医学部の同窓会にでたら、40人のおなじクラスに加齢黄斑変性症をわずらっている人が3人もいたといっておられました。新聞や本を読むとき、読み取る文字が中心窩(ちゅうしんか)に像を結ぶのです。人の顔をみるとき、景色をみるとき、みんな黄斑に像を結びます。このような黄斑はいつもはたらき続けているのです。

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●症状は?

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加齢黄斑変性症は、黄斑に異常がおきてきますので、視野の中央が、暗く見える、よく見えない、線がゆがむ、といった症状が現れます(図3)。最初、片眼に起きて程度が軽いと、患者さん本人は白内障などの年のせいにして見過ごすことも少なくありません。白内障の手術を希望してみえた医師が加齢黄斑変性症だったということもありました。この病気はだんだんに進むのですが、ときに急に視力が落ちることもあります。後でお話しますが、病気の時期、形によっては急速に視力が低下してしまいます。しかし、この病気で真っ暗になるようなことはまずなく、中心以外の視野は保たれていますが、見たテレビが見づらく、本や新聞も読めないという大変不便な状態になってしまいます。
図3

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●どのくらいの人が加齢黄斑変性症にかかっているのでしょうか?

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1980年代には糖尿病網膜症が中途失明原因の一位でしたが、米国ではすでに加齢黄斑変性症が一位になっています。ひとつには糖尿病網膜症の管理・治療が進歩・普及したこともありますが、加齢黄斑変性症が増加しているのも事実です。日本では30年くらい前には珍しい病気でしたが、急速な高齢化や生活様式の変化などのために、やはり加齢黄斑変性症は増加しています。私たちが1987年に全国調査したときの国内の患者数(受領者数)は7,500人と推定されましたが、6年後の1993年の同様な調査では約1万4,400人とほぼ倍増しています。患者さんのほとんどは50歳以上で、欧米とは逆で女性より男性のほうが多いことも分かりました。この数は診療を受けている患者さんの数ですが、その後、九州大学の石橋教授が久山町の45歳以上の人の眼底検査をおこなったところ、加齢黄斑変性症が0.67%の人に認められました。全数調査がいかに大切かお分かりでしょう。

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●病気のかたち(型)

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この病気には進み具合から、あまり急激に進まない質の良い型と出血などを繰り返した進行性のものとがあります。質のよいものは、萎縮型(いしゅくがた)とよばれ、黄斑の年による変化が普通より強いものと考えて下さい。
質の悪いものは、滲出型(しんしゅつがた)とよばれ、網膜の裏にある脈絡膜という血管膜から新生血管(しんせいけっかん)という余分な血管が生えてきて(図4)、むくみや出血を起こしてきます。
この病気には比較的質の良い早期加齢黄斑変性症と進行が早く大切な中心部の視力を失う晩期加齢黄斑変性症とがあります。この晩期のものも良い早期のものから変化していくので、軽い変化を早く見つけることが大切です。晩期加齢黄斑症のほとんどのものは、滲出型です。
図4

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●そして早く発見するには

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人間は両方の目を絶えず使っているので、一方の目の異常が起きても気が付かず、なにかの拍子に片目を閉じて、異常に気がつくことがあります。また、異常があっても年の所為だと思って放置しているということもあります。この異常を早く見つけるには、毎日、片目ずつで細かいものを見る習慣をつける(近用眼鏡(老眼鏡)をかけている人は、装着したまま見てください。)のが一番簡単で、確実な方法です。字が読みにくい、見る中心が暗くなるといった症状に気をつけて下さい。ことに細かい線が歪んで見えるという症状に注意して下さい。

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●検査方法は?

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-中心視野検査
アムスラーチャートは格子状の試験表です。片目を覆って中心にある黒い点をじっと見たまま、線がゆがんでみえないか、周りの四角がかけてみえたりしないかをチェックします。もし、そのようにゆがんだり、かけたり見えた場合は、滲出型(しんしゅつがた)の加齢黄斑変性症の疑いがあるかもしれません。
左:正常時の見え方
右:加齢黄斑変性症を患っている場合の見え方
-眼底検査
眼底(網膜)の状態をみるために行う検査で、点眼薬をさして瞳孔をひらいて行います。検査後はまぶしかったり、視界がぼやけたりしますが、数時間で治ります。
-蛍光眼底血管造影法
滲出型(しんしゅつがた)の加齢黄斑変性症を疑う場合は、蛍光眼底血管造影法という検査を行う必要があります。この検査では、網膜の血管がよくみえるように腕の血管から造影剤を注射し、その造影剤が網膜の血管の中を流れる様子を写真に撮り、新生血管があるかないか、あればどこにあるか、出血しやすいかなどをチェックします。

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●治療法は?

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加齢黄斑変性症の治療ですが、萎縮型(いしゅくがた)には後で述べる補助療法以外ありません。滲出型(しんしゅつがた)にはいくつかありますが、そしてどの治療が良いかは患者ごとに異なります。したがって、治療方法を決めるには十分に検査を受ける必要があります。
滲出型の加齢黄斑変性症の治療法は、この新生血管の位置によって異なります。中心部を離れていればレーザー治療が有効です。中心部に生えるとレーザー治療は難しく、放射線治療、温熱療法などが行われており、また手術で取り除くこともあります。このような治療法は、どれも、新生血管が小さいうちに治療すれば、治療効果は上がります。この点からも早期発見がなんといっても大切です。
萎縮型の加齢黄斑変性症は現在のところ有効な治療方法がありません。しかし、この病気は幸いにも症状の進行がとてもゆっくりなので、片目のみの場合はもちろん、両目を患っている場合にも大概の人は通常の生活を送ることができます。
しかし滲出型の加齢黄斑変性症は両眼に発症するようになる可能性もあるため、また滲出型は必ず萎縮型から発生しますから萎縮型でも定期検査が必要です。

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●レーザー治療はどのように行われるの?

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まず、レーザーの器械の前に座り、あなたの目に特別なレンズを装着するために点眼薬をさして目に麻酔をします。そして、レーザーを照射します。
治療が終われば家に帰ることができますが、あなたの瞳孔は数時間広がったままになるので、付添いの方に家まで送ってもらう必要があります。その際に、瞳孔が広がるとまぶしいので、サングラスを持参すると良いでしょう。
レーザー治療をした日は、視界がぼんやりと見え、また目の痛みも少しあるかもしれませんが、これらは簡単に薬で抑えることができます。
治療後は経過をみるために頻繁に診察をうける必要があります。新生血管より出血がしてないか、もしくは新生血管が再発していないかを確かめるために蛍光眼底血管造影法を行うことがあります。また、新生血管が残っている場合は、さらにレーザー治療を行う必要があるかもしれません。覚えておかなければいけないことは、このレーザー治療は加齢黄斑変性症を治すものではなく、新生血管を凝固して視力がこれ以上低下しないしないようにするための処置であるということです。レーザー手術後でも、新生血管が再び発生する可能性があります。

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●予防法は?

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予防の第一は、強い光を避けること、滲出型(しんしゅつがた)であれば、禁煙、また咳き込み、便秘などの力むことを避けることです。しかし、確実に予防できるという方法はなく、滲出型は必ず萎縮型(いしゅくがた)から移行するように萎縮型でも定期検査をし早期発見につとめることが第一です。
最近では大量のビタミンC、E、ベーターカロチン、亜鉛をとる萎縮型の補助療法が予防に役立つことが分かってきました。ただし、すべての人ではなく、片目は萎縮型でもう一方の目が滲出型の黄斑変性症である人、新生血管が生え易い所見がある人では、萎縮型の方の目が滲出型になるという危険性がおよそ25%下がったという報告があります。
(参考文献:The Age-Related Eye Disease Research Group:The age-related eye disease study (AREDS):A clinical trial of zinc and antioxidants. AREDS Report 2. J of Nutrition 130:1516S-1519S ,2000)

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